こころの奥深くに響く、
トンコリの五つの音色に導かれて。

tonkori工房inonno

tonkori工房inonnoの朝は、カムイ(アイヌの神様)へのお祈りからはじまる

tonkori工房inonnoの朝は、カムイ(アイヌの神様)へのお祈りからはじまる。

工房の名前にもなっている「inonno」はアイヌ語で「祈り」という意味だ。この工房でアイヌの民族弦楽器トンコリを製作するトンコリ作家の二宮さんは、毎朝仕事をする前にカムイへ祈りを届ける。「アイヌではない自分が、アイヌの仕事をさせてもらっていること。それでもトンコリの仕事が途切れずに続いていること。その見えない力に感謝しています。」そう語る二宮さんがトンコリを作り始めたきっかけもまた、見えない力に引き寄せられたような運命的な出会いがきっかけだった。

「29歳のときにこの場所に住み始め、35歳で家具工房を作って独立しました。家具工房を始めて2年目に、ふらりとトンコリ奏者の方が工房に立ち寄ってくれたんです。彼は有名なトンコリのミュージシャンで、それを知らずに『どんな音楽をやっているんですか』と尋ねると、工房のテラスでトンコリを演奏してくれました。そのときトンコリの存在を始めて知り、その音を聞いた瞬間、声が出ないほどの衝撃を感じたんです。」

今から15年以上前のことを、まるで昨日のことのように二宮さんは語ってくれた。その荘厳なトンコリの音色に、まるで波が押し寄せてくるような感覚を覚え、二日間眠れなかったほどだったという。

トンコリは素材の選定からすべて二宮さんが行う トンコリは素材の選定からすべて二宮さんが行う 二宮さんの創りだすオリジナルのトンコリ トンコリ奏者としても活躍している

その出会いから二宮さんは、独学でトンコリについて勉強した。当時はトンコリに関する資料や音源はなかなか手に入らず、CDや写真資料をもとに手探りで学んでいった。最初はトンコリの弦の並びや音階も知らずギターのように弦を張ってみたり、何か違うなと思いCDの音源をたよりに調整を繰り返したり。 作り始めて最初の10年は、作り方はもちろん、アイヌではない作家がトンコリを作ることについても、悩みと試行錯誤が続いた。初期の頃は女性的なフォルムのトンコリを作るなど、どこか伝統的なフォルムを避けていた時期もあったという。

「たまに『現代的なトンコリだね』と言われることがあります。それが良いか悪いかは別として、自分でもそうだと感じています。ただ伝統的な形を模倣をするのではなく、つねに美しい形を目指し、自分にしかできないオリジナルのトンコリを作っていきたいと思っています。今この瞬間、自分の中で良いと思える形が、今の時代にあった美しい形なのです。時が経ち、自分の中で美しいなと思う形が変われば、作るトンコリの形も変わっていくのだと思います。」(二宮さん)

トンコリの形状や中の空洞の大きさによって、音量や音の響きの差が顕著に表れる。楽器の演奏経験はなかった二宮さんだが、トンコリの形はもちろん、より良い音を追求していく中で、自然と演奏ができるようになった。今では友人のライブにゲストとして呼ばれて演奏することも。さらにはピアニストのJaXon(ジャクソン)氏を中心とした民族オーケストラ「ポエティカオーケストラ」に参加するなど、活動の幅を広げている。

二宮さんは、トンコリの面白さをこう語る。
「楽器の演奏が全くできず、ギターも挑戦してみたけれど全くできなかった、という人でもトンコリは演奏できるという人が多いです。トンコリは、たった五つの音(弦)を両方の指で自由に弾くだけで、頑張らなくても音を出すことができます。その音色を自分の中に響かせる楽器なんです。」

弦を弾いて音を出す、自分に響かせる、ただそれだけで心が癒やされる。ひとり静かに一音だけを同じリズムで鳴らし続けているだけでも、まるで瞑想しているかのように、とても気持ち良い感覚を得ることができるのだ。アイヌの人々にとって音楽とは、カムイと対話するひとつの方法だったという。トンコリは音を奏でるだけの道具ではなく、自分と向き合い、心静かに思いをめぐらせるためのツールなのかもしれない。

家具の製作・販売をしている「カントリーバーン」の横にトンコリ工房がある
工房の外から作業している二宮さんの姿が見られる

Information.

tonkori工房inonno Tonkori Kobo Inonno

10:00~17:00 月曜定休(臨時休業あり)
アイヌの民族弦楽器、トンコリの製作・販売する工房。ひとつひとつ丁寧に、誠実さにあふれたトンコリを手作りしている。芸術性の高いオリジナルのトンコリは、演奏用としてはもちろんインテリアの一部としても人気が高い。工房が開いていればいつでも見学可能。タイミングが良ければ、作家さんから直接トンコリの説明を聞けることも。 併設店の「Country Barn(カントリーバーン)」では、家具や小物も販売している。

ポエティカオーケストラ
トンコリ作家の二宮さんもが演奏者として参加している民族オーケストラ。アートスタジオ「長沼ポエティカ」で出会ったアーティスト達が、ピアニストのJaXon(ジャクソン)氏を中心に結成。

Address北海道夕張郡長沼町加賀団体
TEL0123-88-4203
Webhttps://country-barn.com/